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LINKEYの通信方式は、なぜ変わってきたのか|初代のBluetoothからZ-Wave採用に至るまでの技術判断
スマートロックにおいて、通信方式は単なる技術要素ではありません。
鍵が確実に開閉できるか、トラブルなく運用が続けられるかを左右する、重要な前提条件です。
LINKEYの開発においても、通信方式は一度決めて終わりではなく、実際の運用を通じて見直されてきました。
本記事では、初代LINKEYで採用されたBluetooth通信から、LINKEY PlusでZ-Waveへと切り替わるまで、どのような課題があり、どのような判断が積み重ねられてきたのかを見ていきます。
※ 本記事は、LINKEYの開発・運用を通じて得られた知見をもとに、技術選定や設計判断の背景を整理したものです。
技術仕様や構成は、利用環境や運用条件によって最適解が異なる場合があります。
この記事でわかること
- 初代LINKEYでBluetoothが選ばれた理由と、当時の前提条件
- 運用を通じて見えてきたBluetooth通信の課題
- LINKEY PlusでZ-Waveが採用された技術的・運用的背景
初代LINKEYとBluetooth通信|当時としては現実的だった2.4GHz帯の選択
初代LINKEYが開発された当時、「鍵をネットワークにつなぎ、遠隔で制御する」という発想は、まだ一般的ではありませんでした。
Bluetooth Low Energy(BLE)は、
- 消費電力が比較的低い
- スマートフォンと直接通信できる
といった特性を持ち、当時のスマートロックにとって現実的な選択肢でした。
LINKEY開発担当・前田が目指していたのも、まずは「日本の住環境でスマートロックを成立させること」。
その前提に立てば、Bluetoothは合理的な出発点だったといえます。
運用で見えてきたBluetoothの課題|鍵という用途では無視できなかった通信の揺らぎ
しかし、実際に運用を始めると、設計段階では見えなかった課題が少しずつ明らかになっていきました。
Bluetoothが使用する2.4GHz帯は、Wi-Fiや電子レンジなど、他の機器とも電波帯域が重なりやすく、設置環境によって通信の挙動が大きく変わることがあります。
- 壁の材質
- 間取り
- 周囲の電波環境
こうした条件が重なることで、たまに通信が不安定になるケースも見られました。
前田は、この状況を次のように振り返ります。
「100回に1回、いや1000回に1回であっても、通信の失敗はできる限り避けたい。鍵という性質を考えると、そこはどうしても妥協できませんでした」
一般的なIoT機器であれば許容される揺らぎも、鍵の運用では大きなトラブルにつながりかねません。
この現実が、通信方式を見直す大きなきっかけとなりました。
※通信トラブルそのものの対処法や考え方については、別記事「【緊急時も安心】民泊スマートロックが開かないときの対処法とトラブルを防ぐ運用設計」で詳しく解説しています。
LINKEY PlusでZ-Waveを採用した理由|通信速度より「失敗しにくさ」を優先した判断
そこでLINKEY Plusで採用されたのが、Z-Waveという通信方式です。
Z-WaveはSub-GHz帯(900MHz帯)を使用し、2.4GHz帯と比べて他機器との干渉を受けにくい特性があります。
※どの環境でも必ず安定するという万能な方式ではありません。
また、壁や障害物を回り込みやすく、建物内でも安定した通信が期待できる点も特徴です。
前田が重視していたのは、理論上の通信速度や最新性ではありませんでした。
「この環境で、失敗しにくいかどうか」
BluetoothからZ-Waveへの切り替えは、新しい技術を追いかけた結果ではなく、運用の成立性を高めるための現実的な判断だったといえます。
Z-Waveは万能ではない|それでも1〜数台規模で最適解だった理由
もちろん、Z-Waveにも制約はあります。
- アンテナサイズの制約
- 消費電力が劇的に下がるわけではない
- すべての設置環境で完全に問題が解消されるわけではない
それでもLINKEY Plusでは、特に1〜数台規模を主な想定とする宿泊施設や小規模運用において、Z-Waveがもっとも安定して成立しやすい通信方式だと判断されました。
通信方式を「万能な正解」として選ぶのではなく、想定する運用規模や条件に照らして選ぶ。
この考え方が、LINKEYの通信設計には一貫してあります。
通信方式は単純な技術進化の序列ではなく、前提条件で選ばれる|LINKEYの通信設計に一貫する考え方
LINKEY Plusが想定しているのは、入口や数部屋といった、比較的コンパクトな構成の施設です。
その前提においては、Z-Waveの持つ安定性と実用性が、運用上のメリットになります。
通信方式は、新しいか古いか、速いか遅いかで評価されるものではありません。
どの前提条件で使われるのかによって、適切な選択は変わります。
まとめ|LINKEYの通信設計は「現場で確実に動くこと」から逆算される
LINKEYの通信方式は、技術トレンドに合わせて更新されてきたわけではありません。
初代LINKEYのBluetooth、LINKEY PlusのZ-Wave。
それぞれの時点で、「現場で成立するかどうか」という基準で選ばれてきました。
通信方式が変わっても、判断の軸は一貫しています。
次にどの通信が選ばれるかよりも、どの前提条件で、どの通信がもっとも失敗しにくいか。
その問いに向き合い続けることが、LINKEYの通信設計の本質です。
その後、さらに台数が増え、建物規模が大きくなるケースも増えていきました。
こうした前提の変化に対応するため、LINKEYではZ-Waveとは異なる通信方式を採用した製品も開発されています。
次の記事では、LINKEY Proで採用されたLoRaWAN通信が、どのような前提のもとで選ばれたのかを、Z-Waveとの違いに触れながら整理します。
記事の内容を踏まえて、実際の製品構成や仕様を確認したい方は、製品紹介ページもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ最初からZ-Waveや他の通信方式を使わなかったのですか?
初代LINKEYが開発された当時、Bluetooth Low Energy(BLE)は、消費電力や実装面で現実的な選択肢でした。
まずは「日本の住環境でスマートロックを成立させる」ことを優先し、当時の前提条件に合った通信方式が選ばれています。
Q2. Bluetoothは技術的に劣っていたのでしょうか?
そうではありません。Bluetoothは現在も多くの機器で使われている成熟した技術です。
ただし、鍵という用途では「たまに起きる通信の揺らぎ」が運用トラブルにつながるため、用途との相性が課題になりました。
Q3. Bluetooth通信では、具体的にどんな問題が起きていたのですか?
設置環境によって通信の挙動が変わる点です。
壁の材質や間取り、周囲の電波状況によって、まれに通信が不安定になるケースがありました。
鍵の運用では、こうした揺らぎも無視できない要素になります。
Q4. Z-Waveに切り替えたことで、すべての問題は解決しましたか?
すべての環境で完全に問題がなくなるわけではありません。
ただし、建物内での安定性や干渉の受けにくさという点で、LINKEY Plusが想定する運用前提には、Z-Waveの特性がより適していました。
Q5. Z-Waveは今後も使われ続ける通信方式ですか?
はい。LINKEY Plusでは現在もZ-Wave通信を採用しています。
1〜数台規模の宿泊施設や小規模運用では、引き続き安定した選択肢です。
Q6. 通信方式は今後も変わる可能性がありますか?
可能性はあります。
ただし、LINKEYでは新しい技術だから採用するのではなく、運用前提が変わったときに、もっとも成立しやすい通信方式を選ぶという考え方を取っています。
