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LINKEY Proはなぜ生まれたのか|Z-WaveとLoRaWANを併売する通信設計の判断背景
スマートロックの通信方式は、「どの規格が優れているか」という単純な比較で決められるものではありません。
LINKEYでは現在、Z-Wave通信を採用した LINKEY Plus と、LoRaWAN通信を採用した LINKEY Pro を並行して提供しています。
これは旧製品から新製品への「移行」ではなく、想定される運用規模や前提条件の違いに応じて通信方式を分けているためです。
本記事では、LINKEY Proがどのような課題認識のもとで企画され、なぜLoRaWANという通信方式が選ばれたのかを整理します。
※本記事は、LINKEYの開発・運用を通じて得られた知見をもとに、技術選定や設計判断の背景を整理したものです。
技術仕様や構成は、利用環境や運用条件によって最適解が異なる場合があります。
この記事でわかること
- 小規模では問題にならなかったZ-Wave運用の前提
- 台数が増えることで顕在化した、ゲートウェイ構成上の課題
- LINKEY ProとLINKEY Plusが想定している運用規模の違い
Z-Waveが成立していた前提条件|小規模運用では問題にならなかった構成
LINKEY Plusで採用しているZ-Waveは、1〜数台規模の宿泊施設や小規模運用において、安定した遠隔管理を実現してきました。
Z-Waveは、
- 建物内での通信が安定しやすい
- 他機器との干渉を受けにくい
といった特性を持ち、入口や数部屋といった構成では、十分に成立していました。
この前提条件が変わらない限り、Z-Waveをあえて置き換える理由はありません。
台数が増えることで見えてきた別の課題|「1対1構成」が運用負荷になる場面
一方で、導入実績が増えるにつれ、より規模の大きな施設や複数フロア運用の相談も増えていきました。
そうした現場からは、次のような声が聞かれるようになります。
- 「1台のゲートウェイで、複数のスマートロックを管理できないか」
- 「台数が増えると、ゲートウェイの設置や管理が煩雑になる」
- 「部屋のブレーカーが落ちると、通信に影響が出るのが不安」
LINKEY Plus(Z-Wave)では、安定運用を優先し、スマートロック1台に対してゲートウェイ1台という構成としています。
少台数であれば問題にならなかったこの構成も、設置台数が増えるにつれて、
- ゲートウェイの設置場所が増える
- 管理対象が分散する
- 構成全体が把握しづらくなる
といった、運用・管理面での負荷が見えてきました。
「管理単位」を見直す必要があった|ゲートウェイ構成という設計課題
LINKEY開発担当・前田が重視していたのは、通信速度や新しさではなく、運用全体の構造でした。
- ゲートウェイが各部屋に必要
- ゲートウェイを客室内の電源に依存して設置している場合、各部屋のブレーカーの状態が通信継続に影響するケースも
- 台数が増えるほど管理ポイントが増える
これらは個別に見れば小さな問題でも、規模が大きくなると無視できない負担になります。
「1台ずつは安定しているが、全体として見ると重い」
この感覚が、1台のゲートウェイで複数台をカバーできる通信方式を検討するきっかけになりました。
LoRaWANという選択|スマートロックでは珍しい通信規格
そこで候補に挙がったのが、LoRaWAN通信です。
LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)はもともと、
- 環境センサー
- インフラ監視
- 農業用途
など、「広い範囲に点在するIoT機器」を想定した通信規格です。
特徴として、
- 一般に920MHz帯を使用し、建物内でも届きやすい特性がある
- 消費電力が低く、電池駆動に向いている
- 1台のゲートウェイで複数台の端末をまとめて管理できる
といった点があります。
国内のスマートロックでは、LoRaWAN採用はまだ一般的ではありませんでした。
通信速度は速くありませんし、リアルタイム性を最優先する用途には向きません。
しかし前田が見ていたのは、別のポイントです。
速度よりも「全体が止まらないこと」|大規模運用を前提にした技術判断
LINKEY ProでLoRaWANが評価されたのは、大規模運用を成立させるための条件を満たしていたからです。
- ゲートウェイを共用部に設置できる
- 各部屋のブレーカー状態に左右されにくい
- 複数のゲートウェイが補完し合う構成を取れる
LoRaWANの通信は、リアルタイム性を最優先にしたものではありません。
タイミングにより、反映には最大で1分程度のラグが生じる可能性はありますが、それよりも、
- 通信が切れにくいこと
- 一部のトラブルが全体に波及しないこと
が重視されました。
これは、「速さ」よりも「成立し続けるかどうか」を優先した判断です。
LINKEY Proの立ち位置|Z-Waveの代替ではなく、役割分担
重要なのは、LoRaWANはZ-Waveの上位互換ではないという点です。
LINKEYでは現在、
- LINKEY Plus(Z-Wave)
→ 1〜数台規模、シンプルな構成向き
- LINKEY Pro(LoRaWAN)
→ 複数台・フロア/建物単位の運用向き
という考え方で、並行して提供しています。
通信規格の優劣や技術の新旧ではなく、想定する運用規模との相性が判断軸となります。
まとめ|通信方式は、運用を成立させるための手段
LINKEY ProのLoRaWAN通信は、特別な技術を誇るために選ばれたものではありません。
- 台数が増えても管理が破綻しない
- スマートロックとゲートウェイの構成をシンプルに保てる
- フロア単位・建物単位での管理が可能
こうした前提条件の成立を支えるための選択です。
Z-Waveが適している現場もあれば、LoRaWANでなければ難しい現場もある。
LINKEYは、通信方式を一本化するのではなく、前提条件ごとに最適解を用意する道を選びました。
記事の内容を踏まえて、実際の製品構成や仕様を確認したい方は、製品紹介ページもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. Z-Waveは今後なくなりますか?
いいえ。LINKEY Plus(Z-Wave)は現在も提供を続けています。
小規模運用では、引き続き適した選択肢です。
Q2. LINKEY Proは何台くらいから検討すべきですか?
明確な線引きはありませんが、目安としては1拠点で複数台(例:4台以上)の同時管理や、将来的な台数増加を想定している場合は検討対象になります。
Q3. LoRaWANは通信が遅いのでは?
反映に最大で1分程度のラグが生じるケースもあり、即時性はZ-Waveより劣る場合がありますが、大規模運用で「全体が止まらない」ことを重視した設計になっています。
Q4. 小規模でもLINKEY Proを選ぶ意味はありますか?
将来的に台数を増やす予定がある場合や、スマートロックとゲートウェイの管理構成を簡素化したい場合には検討の余地があります。
